協会誌巻頭言
当協会について新年のご挨拶
公益社団法人熊本県精神科協会 会長 相澤 明憲
熊本県精神科協会会員の皆さま,新年あけましておめでとうございます。
令和6年は元日に能登半島地震が起きるというとんでもない始まり方をしました。発災直後から全国の DPATが支援に向かったのですが,豪雪や寸断された道路事情により被災地に入ることすら非常に困難であったと聞いています。熊本地震の記憶はまだまだ薄れることはありませんが,またいつどのような災害が襲ってくるかわからないと考え,しっかりとした備えをしておくことの重要性を再認識しました。災害時においてはまず自助が一番ではありますが,協会内での互助も重要です。現在も定期的に協会独自の連絡訓練などを行っていますが,今後さらに訓練内容の充実を図る必要があるでしょう。
6月に行われた日精協の総会で,国の地域医療構想に精神医療も位置付けると方針が承認されました。これまで精神科は地域医療構想には距離を置いていました。しかし2040年ごろの状況を見すえて,日精協として地域医療構想を協議する中で精神科病床の適正化・機能分化について積極的に発言していくことになりました。地域医療構想の中に位置づけると言っても,医療機能の分け方や医療圏のことなど一般科医療とは異なるところがたくさんあるので,現在厚生労働省に精神医療を位置づけるためのプロジェクトチームが作られ,どのように位置づけるかの検討が行われています。 進捗に従って新たな情報があれば,院長会などでご報告いたします。
全国的に精神病床の病床利用率の低下傾向が続いています。将来推計では入院期間が1年を超える長期入院者が急激に減少していくとされています。我々は,そのような状況の変化に対応するための変化を迫られているようです。
医療 DXへの対応も大きな課題です。国は推進するとしていますが,口は出すが金は出さないという姿勢のようで,現実化はまだ先になりそうです。私のように昭和時代に医師になったものにとってはゆっくり進んだ方がありがたいのですが,一般社会の DXの方はどんどん進みそうなので,医療界だけが取り残されるとの危惧もあります。 今後医療部門での人材不足の深刻化が予想される以上,IT技術を利用した省力化が必須となるでしょう。ただし,その場合に人を何人配置すれば報酬が何点などという医療保険制度のままでは医療活動の効率化などは進みません。DX推進を言うのであれば,その点をしっかり見直してほしいものです。
熊精協の慶事として4月に玉名病院元院長川原延夫先生が瑞宝双光章の叙勲を受けられました。 また10月には城ケ崎病院院長の中田栄治先生が精神保健福祉事業功労で厚生労働大臣表彰を受けられました。両先生の長年の地域の精神医療に対する貢献が認められたものであります。先生方の受賞は協会の誇りとするところであり,心からお喜び申し上げます。
国内外で災害,事件,事故,戦争,内戦,選挙などさまざまな出来事の情報がもたらされました。それらのニュース報道の権威が揺らいだのは,昨年見られた大きな変化と言えるでしょう。ネットの空間を眺めると真偽とり混ざったたくさんの情報があふれており,はたしてどれが真実なのかわからなくなってしまいます。最後は自分の経験や良識で真偽を判断するほかないようです。報道というものはえてして良くないことばかりを取り上げる傾向があるようですが記憶をたどれば,今の世の中は私が小さいころに比べてはるかに安全で健康で清潔で便利になっています。少しずつですが世の中は良い方に進んでいる。昔はよかったなどという人がいますが,そういう人も昭和の生活に戻りますかと言われたら断るに違いありません。精神医療もいろいろなことを言われますが,私が研修医であったころとは比較にならないほど進歩しています。私たちは,これからも自信と誇りをもって地域の精神医療活動を推進していくべきだと思います。 令和7年も熊精協へのご支援とご協力をお願いいたします。また,本年が会員のみなさんにとって良い年であるよう祈念いたします。で,なかなかお座りから進まないという現実もあるが。)ライバルは亡きエリザベス女王様の愛犬コーギーだが,きっと2人は己の使命を果たしてくれる事と私は信じて今日も眠りにつくのだった。
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- 協会誌巻頭言「新年のご挨拶」(PDF)
- 協会誌巻頭言「私の愛おしい小さな子供達」(PDF)
- 協会誌巻頭言「テクノロジーとの共存」(PDF)
- 協会誌巻頭言「新年のご挨拶」(PDF)
- 協会誌巻頭言「精神科医療と身体、連携について」(PDF)
- 協会誌巻頭言「電気代高騰と脱炭素」(PDF)
- 協会誌巻頭言「熊本地震8年を迎えて」(PDF)
- 協会誌巻頭言「新年のご挨拶」(PDF)
- 協会誌巻頭言「今までの人生を振り返り,更に今後の生き方について」(PDF)
- 協会誌巻頭言「もうひとつのパンデミック」(PDF)
- 協会誌巻頭言「新型コロナの行方」(PDF)
- 協会誌巻頭言「新年のご挨拶」(PDF)
- 協会誌巻頭言「人権制限の必要性と有害性」(PDF)
- 協会誌巻頭言「コロナ禍における覚悟」(PDF)
- 協会誌巻頭言「熊精協との30年」(PDF)
- 協会誌巻頭言「新年のご挨拶」(PDF)